摂食障害の心とカロリー制限。不安と安心の間

摂食障害専門カウンセリング
中村綾子です。

1日●kcalまでしか食べてはいけない。
おやつは、●kcal以内。
カロリーが分からないと食べられない。

摂食障害に悩む多くの方が、かなり徹底したカロリー計算やカロリー制限をしています。
少なくとも、カロリー制限をしていた時期を経験していることと思います。

なぜ、カロリーなのか。

それを、どこまで深く考えたことがありますか?
カロリーにこだわる心と、どれほど真剣に向き合い続けていますか?

・・・

1日●kcalと決めたら、
●kcalの自分でいられた。

決めたカロリーを守っていたら、
安心できた。

カロリー制限を守れない自分って、
なんてダメなヤツなんだろうってひたすら自分を責めた・・・etc.

何をどうしていいかも分からず、
自分が何をしたいのか、そもそも自分とは何者なのか、
そして、自分という存在は生きていいのか。

分からないことばかりで
不安でたまらない。

ココに居てはいけないような気がして、
ココにいる自分が、それでもいいという安心がほしくて、
目に見える何かがあれば、安心できるんじゃないかと思って。

数字という「測定」できて
文字に出来て、多く食品に書いてあるモノが、
何かの「安心」を与えてくれるような気がして。

カロリーという数字が、何もかもの指標になった。

カロリーを守れる自分が「イイ自分」で、
カロリーを守れない自分が「ダメな自分」で。

ずっと「イイ自分」でいたいから、
ずっと「イイ自分」でいないと、周りから嫌われるから、
「食べたい」なんて言えない。

「イイ自分」を破るのが怖いから、
ケーキを食べるのが怖い。

「ケーキなんて、要らない」というと、
どこか優越感に感じて、
「イイ自分」をずーっと続けていられるような感じがした。

でも、「ダメな自分」が、時々、猛烈に出来てきてしまう。

ずっと食べなかった甘いものを急に詰め込んだり、
ずっと近寄らなかったコンビニで買い漁ったり。

膨大に食べて、食べた記憶も無くて、
それでもまた買いに走って。

必死でカロリー制限してきたのに、
必死で「イイ自分」をやってきたのに、
何もかも「ダメな自分」が破壊した。

「ダメな自分」と「イイ自分」。

最初は安心を求めて「イイ自分」をやってきたのに、
「イイ自分」をやり続けたら、安心できると思ったのに。

「ダメな自分」がすごく嫌だけれど、
「ダメな自分」でしか居られない自分もいる。

自分が自分で分からないまま。
ただただ、急に襲ってくる「食べたい!」が怖くなる。

・・・・

拒食とカロリー制限と、不安と安心。
そして、爆発的に起きる過食の心理を描いてみました。

摂食障害に悩んでいる方なら、上記の心理は、何度も経験しているのではないでしょうか?

順番に表すと・・・

■摂食障害の心理とカロリー制限

生きていくことの不安

安心を求めたい心

カロリーという数字に安心を求め始める

カロリー制限の生活

カロリー制限で、一時的な安心
「イイ自分」でいられる

カロリー制限が守られない
「ダメな自分」の表出

「イイ自分」と「ダメな自分」の葛藤

どうしていいか分からない・・・

とてもとても良くあるご質問ですが、
「どうしたらいいですか?」は、その質問自体、すでに摂食障害の根本からズレてしまっています。

「どうする」という「行動」ではなく、
「どう思う」「どう感じる」という心に目を向けていくのです。

上記の通り、カロリー制限には、不安と安心の間で揺れ動く心があります。
不安だから、カロリー制限を求める。
カロリー制限に一時的に安心しても、
さらに上手く行かなくなる。

では、そもそも、不安は、何のどんな不安なのでしょうか?

それをじっくり徹底的に考えていくこと。
決して、Q&Aで答が見つかるものではありません。

でも、不安と向き合い、不安を考え続け、言葉のやり取りを続けていく中で、「何か」が見えてくるのかもしれません。

パッと簡単に治りたいと思い方にこそ、じっくり取り組む意味を見直してほしいのです。