
食べて後悔するのに、過食がやめられない
摂食障害専門カウンセラー中村綾子です。
ご家族からよくいただくご質問に
「こんなに痩せ細って、日常生活もままならないのに、なぜあの子は治そうとしないの?」
「困っているはずなのに、どうして自分から言い出さないの?」
「食べて太って泣くのに、どうして過食が辞められないの?」
摂食障害のお嬢様を持つお母様から、このようなご相談をよくいただきす。
端から見れば「異常事態」なのに、本人はなぜか他人事のようにふるまっている…。
その温度差に、ご家族がイライラしたり、無力感を感じたりするのは当然のことです。
実は、摂食障害のお嬢様が「変わろうとしない(動かない)」のには、単なる甘えや頑固さではない、深い心理的な理由があります。
今回のブログ記事では、摂食障害の長期化にひそむ「3つの心理メカニズム」についてお話しします。
1. 「摂食障害の日常」への適応(ゆでガエル現象)
一つ目は、摂食障害の状態がお嬢様にとっての「普通」になってしまっていることです。
例えば、「ゴミ屋敷」の住人を想像してみてください。
最初は散らかっていることに違和感があっても、毎日その中で暮らしていると、脳が感覚を麻痺させ、「これが私の日常」と誤認してしまいます。
摂食障害も同じです。
低体重や過食嘔吐という異常な状態も、1年以上続いていれば脳にとっては「慣れ親しんだ日常」です。
客観的に見れば地獄のような苦しみでも、本人にとっては「安心な世界」になってしまっているのです。
危機感を持てないのは、脳が現状に適応してしまっているからです。
2. 「変わる恐怖」が「今の苦しみ」を上回っている
二つ目は、「変化」に対する強烈な恐怖です。
「治る」ということは、今の自分(痩せている自分、症状で特別扱いしてもらえる自分)を捨てるということ。
これはお嬢様にとって、とてつもない恐怖です。
ゴミ屋敷を片付けるには膨大なエネルギーが必要なように、摂食障害から抜け出すには、現状維持の何倍ものエネルギーが必要になります。
エネルギーが枯渇している本人にとって、「ゴミ(症状)の中でじっとしてやり過ごす」ことは、実は一番省エネで、自分を守るための精一杯の生存戦略なのです。
「変わりたくない」というより、「変わるエネルギーがない」「変わるのが怖くて動けない」と言えるのではないでしょうか。
3. 「コミュニケーションスキル」の欠如
三つ目は、コミュニケーションスキルの問題です。
本当に困っているなら「助けて」と言えばいい。
治りたいのに治し方が分からないのなら、「教えて」と言えばいい。
そう思っているご家族も多いと思います。
しかし、長期化する方の多くは、困った時ほど思考がフリーズしたり、どう伝えていいか分からなくなったりする不器用さを抱えています。
「言葉で説明して解決する」という経験が乏しい場合、相手に察してもらおうとしたり、黙り込んだりしてしまうのです。
これは「言わない」のではなく、パニック状態で「言葉が出てこない」状態に近いと言えます。
「助けて」とコミュニケーションを通して伝えることができないので、拒食・過食とういう症状を通して「気づいて」と叫んでいるのかもしれません。
まとめ:摂食障害の長期化と、家族ができること
お母様が感じる「なぜ動かないの?」というイライラ。
それは、お嬢様が「動かない」のではなく、「ブレーキが錆びついて動けない」状態だからかもしれません。
このメカニズムを知ることで、少しだけ「摂食障害の世界」が理解できるのではないでしょうか。
まずは、お嬢様の心を理解していくところから、一緒に考えていきませんか。
▼オンラインでご自宅からご相談いただけます。

▼ご家族にもご好評いただいています。

