摂食障害の回復をめざすなら、親子のズレを改善することが近道です。
摂食障害専門カウンセラー中村綾子です。
熱心なご家族ほど、摂食障害のお嬢様のお気持ちを汲み取りづらく、「とにかく早く改善!」と突っ走ってしまいがちです。
しかし、お嬢様自身は、摂食障害を発症するほど繊細で感じやすくて傷つきやすいのですから、「自分の気持ちを分かってくれない」と感じやすいとも言えます。
その1つが、「治りたくない気持ち」です。
摂食障害は病気です。
心の病気です。
克服経験者として、カウンセラーとして「治るべき」だと私は考えます。
しかし、摂食障害は心の病気であるがゆえに、「治りたくない気持ち」が沸きやすく、「治らないメリット」も多く存在することも忘れてはいけません。
そこで、今回はご家族がよく誤解しやすいポイント3つを解説します。
【誤解(1)】摂食障害が治れば、やりたいことがなんでも出来る
コレ、本当に多いですよね。
まだまだ治そうという気持ちすら沸いていないお嬢様に向かって、「治ればやりたいことが、何でもできるんだから!」と説得してしまうご家族が少なくありません。残念ながら。
治っても、年齢制限で「やりたいこと」が始められないかもしれません。
治っても、「やりたい仕事」に不採用になるかもしれません。
治っても、すでに時代が変わっているかもしれません(変化の早い時代ですから)。
ですから…
摂食障害を治すことは大切ですが、「治れば何でもできる」と言い過ぎてしまうのはキケンです。
お嬢様が「何でもできるわけではない現実」に直面した時、「(家族が)言っていたのとちがう!」と気づき、親子の信頼関係を崩壊しかねないですから。
【誤解(2)】治れば、すごく楽しい生活が待っている
これこそ、「摂食障害が治れば人生バラ色説」ですよね。
私自身も、摂食障害の最中(特に初期の頃)は、「治れば全て上手く行く」といった考えを持っていたことがありました。
しかし…
拒食症のガリガリに瘦せた体型から、ふつう体重になっても、「ツライ心境」は何も変わらなかったです。
むしろ、体型はふつうなのに、摂食障害の偏見にさらされたり、大学院での学校生活がうまく馴染めなかったりすることは、とても辛かったです。
摂食障害の症状が無くなれば、たしかに「食べることに関するストレス」は激減します。
しかし、「社会の中で生きていけるようになること」という別の課題があります。
当オフィスの摂食障害「継続コース」の卒業基準に「仕事・学校をムリなく安定して続けられること」を挙げているのはこれが理由です。
【誤解(3)】摂食障害を早く治したいはず!
病気だから、早く治りたいはず。
摂食障害の苦しみを、代わりに取ってあげたい。
こうした考えを持つご家族も少なくありません。
しかし…
摂食障害が1年以上続いている場合、ほぼ確実に「摂食障害でいつづけるメリット」があります。
・ガリガリに痩せているから、外で働かなくてもいい
・摂食障害の診断書があるから、欠席日数が大幅に免除される
・年齢的には社会人でも、家でおこずかいがもらえる、買ってもらえる
・お母さんと二人っきりで外出できる(他の兄弟がいる場合でも)
・摂食障害だから、がんばれと言われない、出来ないことがあっても「仕方ないよね」と済む…etc.
なので、「治りたくない」という気持ちを抱きがちです。
摂食障害が1年以上続いていれば、誰しもが「治りたくない気持ち」を大なり小なり持っているものだと考えています。
摂食障害のご家族へ:「治ることがコワイ」を知ってください。
変化はコワイものです。
知らない世界に、たった一人で行くものコワイことです。
ですから…
摂食障害が1年以上続いていれば、
「摂食障害じゃない世界」は、知らないコワイ世界なのです。
ですから、ご家族は「治れば何でもできる」「早く治りたいはず」という思い込みを捨てましょう。
治ることはコワイことなのです。
「治ることがコワイ」からの摂食障害の回復
治ることがコワイ気持ちは誰もが持っています。
しかし、【卒業】できる病気ですから、そうしたクライアント様は何がちがうのかをお伝えします。
・「コワイ気持ち」を正直に話せる相手がいる
・「コワイ」を上回るほどの「やりたいこと」がある
・「コワイ」気持ちを持ちながら併走してくれる相手がいる
こうした本音で話すことが出来て、自分の人生の中で「やりたいこと」が見つかり、それに向かって取り組めると、「コワイ気持ち」を持ったまま、回復に進むことができます。
摂食障害専門カウンセリングでは、その「相手」になることができます。
決して「コワイ気持ち」が消えたり否定したりするものではありません。
「治るのがコワイ気持ち」を持ち続けつつも、あまり大きくなり過ぎず、気にならなくなる状態です。
「治ることがコワイ」と言ってもいい。私はそう思っています。