摂食障害専門カウンセラー中村綾子です。
拒食症のお嬢様が、なかなか食べられるようにならない時、ご家族も焦りますよね。
もちろん命を守るために体重の回復は必要ですが、「ほんとうに大切なこと」を見落としていませんか?
拒食症:「やりたいこと」があれば、食べられるようになる?
拒食症のご本人やご家族から、よくこんな声を聞きます。
「将来の夢が見つかれば、自然と食べられるようになるんじゃないか」
「趣味や打ち込めることがあれば、きっと気持ちも前向きになるはず」
たしかに、夢や目標があることは回復への支えになることもあります。
けれど実際には、やりたいことがあっても「食べる」ことがうまくいかない方も少なくありません。
やりたいことよりも、拒食症の心の奥の「苦しさ」のほうが重い
なぜ、やりたいことがあるのに食べられないのか――
それは多くの場合、「摂食障害の根にある苦しさ」のほうがずっと深く、重く、強いからです。
長年ふたをしてきた感情
言葉にならなかった傷
うまく表現できなかった対人関係のモヤモヤ…
そうした心の課題が、食べるという行為を強く拒んでしまうことがあります。
また、「治る道筋」が見えていないことも、回復を難しくする要因です。
拒食症の状態と、「治った状態」との間に、大きな距離を感じていませんか?
そのギャップが大きすぎると、「どこから始めていいのか分からない」「回復までが遠すぎる」と感じ、動けなくなってしまうのも自然なことです。
▼拒食症の回復を3ステップで《図解》しました。
私自身の拒食症の体験から
私は、1月に拒食症と診断されました。
でもその時、すでに4月から大学院に進学することが決まっていたんです。
「勉強に打ち込めば、自然に治るかもしれない」
「やりたいことがあるから、大丈夫」
そう思いたかったし、実際そう信じていました。
けれど現実は、大学院入学前に自己最低体重を記録し、入学後も拒食症は改善しませんでした。
なぜなら、私の場合は親子関係の葛藤という未解決の問題が、長年に渡り残っていたからです。
拒食症の回復は、「やりたいこと」だけでは足りない
やりたいことがあるのに、なぜ食べられないのか。
この疑問は多くのご家族が抱きますが、摂食障害は「やりたいことがあれば自然に治る」という単純な病気ではありません。
大切なのは、「やりたいこと」を追いかけることではなく、「治すための具体的な努力」を積み重ねること。
もしかしたら今、
・本人が夢を語っているから大丈夫
・将来に希望を持っているから回復できそう
と思っていませんか?
でも実際は、「拒食症の心」に触れないままでは、食事の回復につながっていかないことも多いのです。
どうか、「やりたいことがあるのに、どうして食べられないの?」と悩んだとき、お嬢様の心の声に、そっと目を向けてみてくださいね。
▼拒食症から過食になることを恐れている方へ