摂食障害専門カウンセラー中村綾子です。
拒食症のお嬢様の生理が止まっていることを心配して婦人科に相談した際、体重がまだ回復していないのに「生理を起こすため」としてホルモン剤を処方されるケースがあります。
しかし、これにはいくつかの大きな「落とし穴」があります。
1. 拒食症:身体の飢餓状態が改善されない
そもそも生理が止まったのは、体重が減って体が「飢餓状態」になったからです。ホルモン治療は、その原因(=栄養不足)を無視して、無理やり結果(=生理様の出血)だけを起こすようなものです。
身体のエネルギーが空っぽで「警告ランプ」が点灯しているのに、警告ランプだけを見えなくしてしまうようなものです。
身体が壊れかけている事実は何も変わりません。
2. 「治った」という誤解を生む
ホルモン剤で人工的に出血(生理)が起きると、お嬢様もお母様も「生理が来たから治ったんだ」と安心してしまいがちです。
この「偽りの安心感」が最も危険です。
まだ体重を増やす必要があるのに、「もう大丈夫」と食事へのモチベーションが下がってしまったり、治療が中断してしまう危険性があります。
無月経という体からの大事なサインを、薬でかき消してしまうことになるのです。
3. 骨への効果が限定的
「ホルモン剤は骨粗しょう症の予防になる」と言われることもあります。しかし、栄養不足の状態で女性ホルモンだけを補充しても、健康な体が自分で作り出すホルモンのようには骨を守れません。
骨を強くするためには、ホルモン以上に「十分な栄養」と「体重による負荷」が不可欠です。
体重を回復させ、自力で生理が来る状態を目指すことが、将来の骨の健康を守る一番の近道です。
摂食障害専門カウンセラーからお母様方へのメッセージ
もし婦人科でホルモン治療を提案されたら、まず摂食障害の主治医(精神科)に相談しましょう。そして、婦人科の先生に勇気を出してこう質問してみてください。
「体重がこのままの状態でホルモン治療を始めることに、どのような意味がありますか?」
「栄養状態の改善や体重回復と、どちらを優先すべきでしょうか?」
治療のゴールは、薬で生理を起こすことではなく、お嬢様の体が自力で生理を取り戻せるまで健康になることです。
拒食症の本当の治し方に立ち返って、治療も情報も取捨選択して、回復に向かっていきましょう。
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