理想の家族が、摂食障害の心をますます苦しめる

摂食障害専門カウンセリング
中村綾子です。

家族だんらん
家族和気あいあい
家族なんだから、何でも話して

そんな理想像をずーっと抱いていませんか?

特に、母親カウンセリングでお会いするお母様方に多い声です。

「せっかく家族なんだから・・・」
「家族がバラバラなのは寂しい」
「家族一緒に・・・」

その理想が、実は摂食障害のお嬢様を苦しめているのかもしれません。

私の場合、両親が「家族一緒に」を求めていたというより、
私自身が、求めていました。

「家族で一致団結して、私の摂食障害と闘ってくれないと!」と思っていたり、
「私がこんなに困っているのだから、ちゃんと理解して!」と願ったり。

でも、全然うまく行きませんでした。

「家族は仲良しであるべき」と思っていたので、
一緒に食べたくない夕飯も、一緒に頑張って食べていました。

特に、手足が不自由な親戚と同居が始まった頃だったので、
本当に上手く行きませんでした。

上手くたべられない親戚と
摂食障害の私の同席。

でも、理想の家族像にこだわっていたんです。

それで、ますます食べることが上手く行かなくなりました。

母は「家族みんなで夕飯」を希望していたと思いますが、
それほど強制してはいなかったと思います。

そのうち、私が塾のアルバイトを開始したので、
必然的に私ひとりの夕飯になっていきました。

家族の在り方や
家族に求めるものって、一人ひとり違うとは思いますが・・・

お互いに理想像を押し付けあっていませんか?

理想の家族でいたい
理想の娘でいなければいけない・・・

私は、「いい娘」になりたかったのかもしれませんが、
自分で自分に「いい娘」を求めることに疲れ果てていったのだと思います。

家族みんなでの食卓とは、
「いい娘」でいる自分を証明しようとしていたのではないか・・・と
今振り返って感じています。

ストレートに言うなら、

理想の親ではないのに
理想の家族だけ叶えるのはムリ!

これが、当事者の私の意見です。

我が家は、かなりハッキリした男尊女卑の家庭です。

特に父はその考えが激しく
「女の子なんだから、勉強なんかしなくていい」

幼い頃から、そう言われてきました。
その時点で、すでに私の理想の親では無いのです。

子どもは親を選べない。
子どもが生まれるかどうかも選べない。

でも、生まれてきてしまったのです。

「あなたは、望まれて生まれてきたのよ」

という言葉もありますが、、、

「望んだ」のは周りであって、
生まれた子ども自身ではありません。

摂食障害真っ最中の時、本当に毎日毎日が苦しくて
生まれて来なければ良かったと、何度思ったことでしょうか。

生まれこなければ、
摂食障害にならずに済んだ。

生まれていなければ、
摂食障害の苦しみを知らずに済んだ。

ずーっとそう言っていました。
摂食障害とは、それほど苦しい病気なのです。

だから、理想を手放すことです。

仲良し家族という理想も
一家団欒という理想の時間も
いい娘という理想像も、

それぞれ手放していくことで、
一つ一つラクになっていきます。

結局、摂食障害が治って、自活できるようになれば、
手に入る自由はたくさんあります。

自分で働いて
自分のお金があって
好きなモノを買って
好きな場所に住んで

それらは、大きな自由です。

さらに、治った後に、家族が穏やかに変わる場合もあるのです。
我が家はその経過をたどってきました。

治る過程の中で、
「理想の家族」を手放し、
「いい子・いい娘」を辞めていくことは、
自分の心を守っていくために必要なことではないでしょうか?

摂食障害のご本人とのカウンセリングでも、
「家族一緒に・・・」という話題や
その考え方が苦しいという訴えは、とてもよくあります。

そして、「手放す」「諦める」「辞める」ことで、
実は穏やかになっていくことがたくさんあるのです。

・頑張って話すのを辞めたら、ちゃんと返事をするようになった。
・いつも一緒の外出を辞めたら、自分がムリしていたことに気づいた。
・無理やり会話に付き合うのを辞めたら、自分の部屋にいるのが楽しくなった・・・etc.

変化は、待っていても始まるものではありません。
変化は、何かを手放してスペースが出来た後、
おのずとやってくるものなのです。

理想の家族よりも、
理想の自分だけを目指していきませんか?

私の場合、理想の家族を諦め、この【枠組み】から自由になった時、ホントの回復が始まりました。