摂食障害専門カウンセリング
中村綾子です。
「愛情をかけて育ててきたのに」
「やりたいと言ったことは、全てやらせてきたのに」
「いつも仲良く、何でも話せる友達みたいな親子だったのに」
こうしたお母様の声の「●●だったのに」に続くのは、「摂食障害になってしまったんです・・・」という言葉と多くの涙です。
一方で、
「私のこと、何も分かってくれない」
「いつもいつも反対されてばかりいた」
「誉めてほしい時に、誉めてくれなかった」
と語る、摂食障害のお嬢様方が多くいます。
私は、どちらの味方でもありません。
なぜなら、どちらか一方だけがワルモノとは思わないからです。
摂食障害の母娘関係にピッタリの言葉と出会いましたので、ご紹介します。
人と人との関係は有機的なもので、どんな場合もどちらか一方に問題があるわけではない。
たとえ母親に問題の多くがあったとしても、その影響下にある娘の言動にもいろいろな問題を生み、それが結果的にさらに母親の態度を硬化させる、という悪循環が生じている可能性がある。
*『怒り始めた娘たち 「母娘ストレスの処方箋」』(香山リカ著・新潮社)
「どんな場合もどちらか一方に問題があるわけではない」です。
この考え方は、改めて強調しておきたいと思います。
どちらか一方ではないけれど、いつの間にか微妙なズレが重なり、積み重なって限界に達したから摂食障害という病気になったのです。
冒頭の言葉を1つ1つ解説していきます。
「愛情をかけて育ててきたのに」
本当にその通りだと思います。
カウンセリングでお会いしているお母様方から、こうした言葉をいただく度に、「その通り」と思っています。
お母様が考える愛情をたっぷり注いでこられたことは、事実だと思います。
その上で、お母様が考える愛情と、お嬢様が求めていた愛情。
いろんな場面で、食い違っていなかったか、振り返ってみましょう^^
「やりたいと言ったことは、全てやらせてきたのに」
はい。
これも、ホントだと思います。
生い立ちを伺うと、数々の習い事をして、とても楽しそうな親子の姿が伝わってくることが多いです。
では、その「やりたい」が、本心からだったのか、誘導してこなかったか、振り返ってみましょう。
もちろん、幼い頃に、周りの誘導が無い環境で、自ら進んで「やりたい」と言い出すことは稀だと思います。
誘導する環境も良かれと思ってされたことかもしれません。
大事なのは、興味・関心が無くなった時に、自由に話し合える親子関係があったかどうか、です。
「いつも仲良く、何でも話せる友達みたいな親子だったのに」
楽しそうに一緒に写真を撮ったり
2人でお出かけしたり・・・
そういう親子が多いですよね。
友達みたいになんでも話せたのに、どうして摂食障害に!?というショックは大きいかと思います。
いろんな話をしてきたことがウソだったわけではありません。
でも、いろんな話の中にも「言えなかったこと」があったのかもしれない・・・と振り返ってみて欲しいのです。
さらに、「親子」が、「友達みたいな関係」になることって、ホントに健全な関係でしょうか?
誰のために、「友達みたいな関係」をつくってきたのでしょうか?
「私のこと、何も分かってくれない」
摂食障害真っ最中の頃、私も同じ言葉を繰り返し言っていました。
何度も何度も。
でも、今は思います。
分かってくれた部分が、ほとんどだったことを。
そして、治ると信じてくれたのも、私のことを分かってくれていたからだと。
分かってくれない!と思うのは、
分かってくれる部分が多くあって、その中のほんの一部の「分かってくれないこと」が気になって仕方がない状態です。
ほんの一部ばかりに目が向いてしまう自分こそ、向き合うことなのです。
「いつもいつも反対されてばかりいた」
やりたいことをやらせてというご両親と
いつも反対されたというお嬢様。
こうした当事者同士ばかりの話では、ずーっと平行線ですよね。。。
これは、習い事や進路選択という事実を振り返るよりも、「どう感じたか」を言葉に出していくほうが有効です。
こうした「感じ方」こそ、カウンセリングなどの場面を、ぜひ利用してください。
「誉めてほしい時に、誉めてくれなかった」
これも多い声です。
誉められたかった時に、ほんの少しのミスを指摘された。
周りの子は、同程度でたくさん褒められているのに、自分は何も言われなかった。
そんな気持ちが溜まっていくんですよね。。。
同時に、「誉め言葉を素直に受け取ることが出来たか?」という問いも、自分に投げかけてみてください。
きっと、周りには誉めてくれる人もたくさんいたはずです。
そして今も、誉めてくれる人はいるはずです。
そんな人たちの心を、素直に受け取っていますか?
・・・
母娘のズレ。
何らかの方法で、ズレが修復されたり、解消されることが理想です。
でも、摂食障害になってしまった以上、自然治癒を求めていてもなかなか上手くいきません。
せっかく摂食障害という病気になったのだから、そこから学ぶことを見つけていきましょう^^