摂食障害カウンセリング
中村綾子です。
「アドバイスください!」
「治るためなら、何でもやります!」
そうした声は、一見、とても前向きにも感じられますが・・・
実際、「やる」かどうかは、全くの別問題です^^;;
なぜなら・・・
摂食障害が治ることを恐れているから。
一般的には、「病気なら、早く治りたいと思って当然じゃない?」と思われるかもしれませんが・・・
摂食障害の場合は、逆の考えが多いです。
病気なのに、治りたくない心理。
不健康なのに、健康になることが怖い。
「心理」も、「怖い」と感じるのも、
やっぱり心なのです。
食ではなく、心です。
今回のご質問をご紹介します。*ご質問受付は終了しました(追記:2021年5月)
*ブログ回答は、私の個人的な経験とカウンセリング方針に基づいています。
*全ての方に当てはまるとは限りませんので、予めご了承ください。
戻る分からないけれど生理を戻すようにすべきなのは分かります。けれど、友達も彼氏もいないような自分が、太って見た目が健康になることが怖いです。もしもこれから食べる量を増やして体重増加できそうなら、長い間無月経でも、
退職せず今の生活を続けていけるでしょうか。
ご質問をありがとうございます。
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1.なぜ、摂食障害の回復に完全休養がオススメなのか?
2.「長い間、無月経」のリスク
3.摂食障害が治って、健康になることがコワイ
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について1つずつ解説します。
1.なぜ、摂食障害の回復に完全休養がオススメなのか?
これは、多くの方が、受け入れられないことですが・・・
完全休養をオススメする理由は何だと思いますか?
そして、何十回も「完全休養」という言葉を、このブログで読みながらも、
あなたが、完全休養を受け入れられない理由は何でしょうか?
私が完全休養をオススメする理由は
(1)全力疾走しながら心と体のケアは無理
(2)治ることは、生き方を変えること
(3)「その他のストレス」をゼロにする時間
まず、(1)ですが・・・
フルマラソンを走りながら、身体と心のケアをすることは、不可能ですよね?
筋肉を回復させるために、
栄養補給も休むことも
専門のトレーナーからアドバイス受けることも
マッサージなどを受けることも
必要なはずです。
だからこそ、立ち止まるしかないのです。
それは、摂食障害の心も同じです。
「◯◯しながら」だからの回復は、難しい場合がおおいです。
まず、立ち止まること。
立ち止まる自分を許すこと。
そこから初めていきませんか?
そして、(2)の「生き方を変える」ですが、
これも繰り返しお伝えしている通り・・・
【食べることは、生きること】だからです。
頭が悪くても
収入が少なくても
人は生きていけます。
けれど、食べることが出来なくなったら、
1日として人は生きていけないのです。
これは、拒食症だけに当てはまる考え方ではありません。
過食でも過食嘔吐でも同じです。
食欲とは、本能なのです。
その本能が上手くいかなくなるほど、
心はツライ状態に追い込まれてしまっています。
治ることはカンタンではありません。
同時に、治ることは不可能ではありません。
だからこそ、あなた自身が、「生き方」そのものを見直すことが必要なのです。
摂食障害を、もっと真剣に深刻にとらえていきませんか?
(3)の「その他のストレス」ですが・・・
お仕事していれば、
どんなお仕事であっても、ストレスはあります。
摂食障害の心の状態とは、
ストレスに過剰に反応してしまう状態とも言えます。
なぜなら、「根っこ」に何らかの苦しみを抱えているからです。
「根っこの苦しみ」 + 「仕事ストレス」
この両方で、あなたはますます追い詰められてしまうのではないでしょうか?
だからまず、仕事という「その他のストレス」をゼロにする。
その上で、「根っこの苦しみ」と向き合っていくことが必要なのです。
「根っこの苦しみ」が何なのか、すぐには分からないことも多々あります。
そして、これは治療者(医師・カウンセラー)と共に進めていくことなのです。
ぜひ、相性のいい治療者と出会っていってください。
2.「長い間、無月経」のリスク
無月経に限らず言えることですが・・・
長期化すればするほど、治るのがむつかしいですよね。
カンタンな例を挙げるなら、
姿勢です^^
何十年も猫背でいる人が、
急に治すのは難しいはずです。
なぜなら、習慣になってしまっているからです。
それが、小学生であれば、
きっと早く治るはずです。
無月経も、摂食障害も同じです。
長期化すればするほど、身体へのダメージは大きくなります。
無月経であれば、子宮が収縮するとも言われていますし、
骨粗しょう症のリスクが大きくなったり
将来的に不妊になる可能性もある・・・というのは、
きっとご存知の通りかと思います。
摂食障害の長期化も、
体へのダメージ、心へのダメージは両方あると思います。
私が、摂食障害カウンセリングで痛感するのは、「摂食障害でいることが、当たり前」になってしまっている方々です。
「摂食障害の自分」でいることがアイデンティティーになっているからこそ、そのアイデンティティーを辞められない・手放せない。
ご家族にとっても、「◯◯ちゃん」の前に「摂食障害の◯◯ちゃん」という存在が、当たり前になってしまっている場合、回復がとても難しくなっていきます。
拒食・過食でいることが当たり前
「摂食障害だから」という言葉が当たり前
友達と外出・外食しないことが当たり前・・・etc.
こうした「当たり前」を自覚していただき、「当たり前」を当たり前であってはいけないんだ、と思い始めるところから始まるのです。
無月経も、摂食障害も、長期化そのものにリスクがとても大きいのです。
「当たり前」になる前に、
「長期化してもいい」と諦める前に、
どうか治る道を選んでほしいと、私は心から願っています。
3.摂食障害が治って、健康になることがコワイ
コレ、よくあります。
よくわかります。
けれど、周りからはなかなか理解されない心境です。
ご質問の文章の中では、「食べる量を増やすかどうか」に重きを置いている印象がありますが・・・
私は、「太って見た目健康になることが怖い」という言葉のほうが、ずっとずっと深い悩みのように感じました。
これが、解決・改善していくことが、目先の食事量の変化よりも、「根っこ」の問題に感じたからです。
摂食障害という病気は、
心が何かを訴えている状態です。
健康になることよりも
生きることよりも
痩せていたい。
つまり、「命よりも痩せが大事」と言えます。
学校・職場で上手くいくことよりも
休日に遊ぶことよりも
「痩せ」のままで居続ける自分。
そこに価値を置いてしまうのですよね。。。
これは、悪循環にハマってしまっていることにお気づきでしょうか?
学校・職場で上手くいかない
↓
思い詰めて食べられない
↓
痩せる
↓
周りが心配してくれる
自分も「痩せ」に価値を見出す
「痩せの自分」が確立していく
↓
もっと痩せていたい
↓
痩せていないと心配してもらえない
「痩せの自分」を失ったら、何も残らない
↓
「痩せ」で居続けるしかない・・・
こんな悪循環に気付いていますか?
この図解は、便宜上、一直線に書いていますが・・・
ホントは、途中のサポートがあれば、悪循環のリスクは減るのです。
それが、「家族のサポート」です。
何でも相談できる関係
何を言っても受け止めてもらえる関係
どんな状態でも愛されているという確信
こうした良好な家族関係があれば、職場や学校で上手くいかなくても、「痩せにハマる」リスクは激減すると言えます。
転校・転職は可能ですが、
どんな人と共に過ごすかは選ぶことが出来ません。
そして、周りの人間をあなたが、変えることは出来ません。
だからこそ、『家族関係』なのです。
家族の中は、今からでも変えていく事が出来ます。
友達がいない
彼氏がいない
自分が自分でいられない・・・
こうした不安、ご家族に話せていますか?
何でも話していい、話して大丈夫だと思えますか?
私は「安心できる対人関係」こそが、いろんなことを乗り越える原動力になると信じています。
その対人関係の第一歩が、「家族」なのではないでしょうか?
摂食障害専門カウンセラーとして、私はお母様方のこんな言葉は間違いだとお伝えしたいのです。