摂食障害専門カウンセラー中村綾子です。
摂食障害(拒食症/過食症)は、ご家族の接し方こそ回復のカギです。
当オフィスではお母様のみのカウンセリングも多く承っていますが、やはり「家でなんて言ったらいいか分からない」「接し方がブレてばかり」というご相談が少なくありません。
今回ご紹介するNG対応から、より良い接し方に変えていきましょう。
摂食障害の子を持つ家族がやりがちなNG対応5選
摂食障害の回復には、家族の関わり方がとても重要です。
でも、実は「良かれと思ってやったこと」が、逆に回復を遠ざけてしまうケースも少なくありません。
今回は、摂食障害の専門カウンセラーとして、よく見かける家族のNG対応5つをご紹介します。
NG例1:拒食症から体重が増えたらご褒美旅行
「体重が〇kg増えたら旅行に行こう」「体重が〇㎏になったら***を買ってあげる」と約束して励ますご家族もいますが、これはNGです。
・摂食障害が誰の病気なのか分からなくなってしまう
・体重を増やすことがゴールだと勘違いしてしまう
ということになりかねません。
また、今後体重が増えていき標準的な体重になった後、「いつまでご褒美をあげつづけるのか」という辞め時の悩みもうまれるはずです。
ですから、体重に関してご褒美は一切不要です。
お嬢様にはきちんと理由を話し、1日も早くご褒美をやめましょう。
NG例2: 母娘でカフェや外食ばかり行く
「少しでも多く食べてくれるなら…」と、お母様とお嬢様のふたりでカフェなどの外食に頻繁にでかける方が多いようです。
また外食しても一人分ずつ注文せずに「シェア」して済ますこともよく聞きます。
お嬢様が中学生以上であれば、シェア禁止と考えましょう。
これは
・母娘の共依存につながるリスク
・「一人分」が分からなくなってしまうリスク
という2つの点から、NG対応と言えます。
外出・外食は「お母様と2人で」という状態から、できるだけ同世代のお友達との付き合いにシフトしていきましょう。
食事に関しては家で安心できる環境で、1日3食「定食スタイル」で食べることがベストです。
ご家族のサポート方法については動画でも学んでいただけます。
NG例3:自宅療養中に家事を任せてしまう
「家にいるなら家事くらいできるでしょ」と役割を与えたくなるかもしれません。
でも、摂食障害で自宅療養している最中に家事をするのはぜったいNGです。
理由は、自宅療養だからです。
自宅療養とは、「自宅に居て、治すことに専念する期間」ではないでしょうか?
学校・仕事に行くことができないほど摂食障害の状態が深刻で長く続いているはずです。
そのため、取り組むことは家事ではなく「治すこと」です。
ご家族の中には「暇だと過食してしまうから」「やることが無いとイライラするみたいだから」とおっしゃる方もいますが、こうした時間こそ「自分の心と向き合う時間」です。
自宅療養は、摂食障害を治す時間。
家事は、ぜったいNGです。
摂食障害のお嬢様自身がやりたいと言い出しても、ご家族は毅然とした態度で禁止しましょう。
NG例4: 低体重でも「本人がその気になるまで待つ」
本人の意欲を大事にしたい気持ちは分かります。
でも、見守る“だけ”は危険なこともあります。
摂食障害は症状が進むほど「自分から治そう」と思えなくなることが多いです。
理由は、心も体もエネルギー不足を起こしているため、じっくり考えることが難しくなってしまうからです。
家族が先に動き、専門家につながるきっかけを作ることがとても大切です。
ご家族が摂食障害のただしい知識・ただしい治り方を身につけ、お嬢様の回復段階に合わせたアプローチを選択できるようになりましょう。
NG例5: 摂食障害からの社会復帰を考えない
摂食障害のお嬢様の接し方が分からないが故に「腫れ物に触れる関わり方」に陥ってしまうご家族もいらっしゃいます。
また、「焦るのは良くないし…」という気持から時間ばかり過ぎてしまっている場合もあります。
順番としては、「治って働く」です。
まずは摂食障害を治すこと。
そして、働くこと。
私はよく「治る期限をきめましょう」とお伝えしています。
いつまでに治るのか
いつまでに仕事に就くのか
こうしたゴール設定から逆算して、社会復帰のスケジュールを組み立てていきましょう。
時間は有限です。
お嬢様の年齢も
ご両親の年齢も
ずっと同じではなく、確実に歳を重ねていきます。
ぜひ時間をシビアに考え、社会復帰として、お嬢様に合う働き方を見つけていきましょう。
カウンセラーとしても、経験者としても「治って働く」という視点をとても大事にしていますので、動画にもまとめました。
摂食障害とご家族:NG対応を知ることが第一歩
ご家族として良かれと思ってやっていることが、実は回復の妨げになることもあります。
「こういうことがNGだったのか」と気づいていただいた上で、今日から1つずつ改善していきましょう。